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このようなことは、まず自分で積極的に数多く試してみることが重要ですが、
ポイントとなるのは、硬度による、タッチ(筆触…つまり線の表情)の違い、
調子を出すための線の密度の違い、そして鉛筆の色合いの違い…といったところでしょうか。


例ですが…… モチーフの、台に映る影を描写しようとする場合、
同じ程度の暗さでも、4Bによる調子と、HBによる調子とでは、かなり印象が違うはずです。
比較すると、4Bで作った調子は粗く、HBによるものの方が線の密度が高くなり、
4Bによる影は、少し浮き出て見えてしまう…というようなことがあります。

モチーフの状態や、光の状態、台の部分の素材があるのかどうかにもより見え方は変わりますし、
また、実際には、4Bだけ、HBだけ…で影を描くという事はないでしょうし、
上記は説明のための、【例え】です。
影は4Bで描いてはイケナイ…等というつもりはありません。…が、これに近いことはよく見受けられます。


同様の効果の応用として、同じ色で、更に光の条件もほぼ同じであるモチーフの、
近い部分と遠い部分を、描き分けたい…というようなとき、
同じ調子を、4Bで出すのと、Bで出すのとの違いを利用する事ができるかもしれません。


下地を4Bで作り、上からFのタッチを重ねるのと、逆に、下地をFで作り、4Bを重ねるのと、
どのような違いがあるのか、無いのかを知っておく…等というようなことも、
何らかの表現に役立つかもしれません。

硬度の使い分けによる様々な表現は、実際のデッサンの制作の過程で、少しずつ実験するつもりで、
積極的に試していくようにすると良いと思います。


が、デッサンはあくまでも観察が主体ですから、
まず観察して、感じ取った、表現したいものを、どう表現するか…というときに、
鉛筆の技法を工夫してみる、というスタンスでなければいけません。

こういう鉛筆を使えばこう見えるはずだ…というようなテクニック先行の表現になってしまっては、
デッサンとしては弱い、リアリティのないものになってしまいますので注意が必要です。
# by hiratsukadessan | 2010-10-27 03:39 | デッサン技法
一般的に、デッサンの描き始めには、2B〜3B程度が適していると思います。
構図を決め、配置を探り、かたちの大まかなアタリを取る作業の段階です。

この段階では大まかな線を用い、細部の描写はしませんから、
芯は柔らかめのものを使って、軽い筆圧で、大きなタッチを描くようにします。

ここでは、あとで修正を行なうことや、上に線を描き加えていく事を考えなければなりませんが、
描き始めの白い画用紙に対して、薄い線では、目安になりにくく、
そのため、硬い鉛筆を使うと、どうしても筆圧が高くなり勝ちで、画用紙の目を潰してしまったり、
画用紙に跡を残す事が多くなります。

しかし、最初は、かたちや位置を探るアタリの線や補助線など、多くの線を使うので、
軟らかい5B、6Bとなると、それらの線が重なり黒くなり過ぎ、最終的に明るい調子を出したい部分などに
余分な暗さが出て、調子の幅が狭くなることに繋がりやすいです。

従って、描き始めは、後の作業がしやすいように、中間程度の鉛筆を使用します。

その後、ある程度かたちを描き込む段階までは、このまま進め、
全体に大きな調子を入れる段階になれば、少し柔らかめの鉛筆に変えて、大きな調子をつけると良いでしょう。

大きな調子を入れる際は、細かい面の変化は無視して、大きなタッチで調子を作ることになるので、
この時の線は、粗いものになります。
この粗い線が最後まで残ると、微妙な表現の邪魔になる場合がありますから、
上に重ねる線にうまく溶けこんでタッチが消えていくようにするには、柔らかめの鉛筆が
適しています。また、後に練りゴムの効果も出しやすいです。

基本的に、硬めの鉛筆は画用紙の目を潰しやすいので、硬い鉛筆を多く重ねて作った調子は、
その上に軟らかい鉛筆を重ねても、それ以上の暗い調子が出にくくなります。
そして、硬い鉛筆のタッチは、軟らかい鉛筆よりも練りゴムが効きにくいという面もありますので、
ベースとなる作業には、硬い鉛筆を使う事は避けた方が良いです。

仕上げに近づいて細部の描写が多くなると、細かい表現には、硬めの鉛筆の方が向いています。

また、(1)に書いたように、軟らかい鉛筆で作った調子の上に、
少し硬めの鉛筆のタッチを重ねる事によって、更に深い調子を出すこともでき、
つまり、軟らかい鉛筆による調子に、硬めの鉛筆を重ねる事で、
より微妙な調子の変化を作り出すことが可能になります。

ですから基本的な流れとしては、軟らかめの鉛筆で描き始め、調子を入れ、
段階を追って、硬めの鉛筆で仕上げて行く…というようなものになりますが、
実際は、描き込みが進むと、素材感・質感、色合い、量感、奥行き、等、様々の表現のために、
鉛筆の硬度を使い分け、その効果を活用することになります。
# by hiratsukadessan | 2010-10-27 03:25 | デッサン技法
平塚デッサン塾では、2H H F HB B 2B 3B 4B 5B 6Bの10本の鉛筆を用意して頂きます。
表現の幅を拡げるためには鉛筆の硬度の使い分けも重要です。

以前の記事に書いたように、例えば同じ2Bでも、鉛筆メーカーが違えば、色合いも硬度も
変わってしまいますが、大切なことは硬度の【関係】を使い分ける事ですから、
まずはひとつのメーカーで揃えた鉛筆のそれぞれの硬度の違いを経験して、
自分に合った表現を探ってみてください。

人によって、筆圧やタッチの癖など、鉛筆の使い方にはそれぞれ微妙な違いがあり
「好み」の問題もありますから、細かいことは使う人自身が、実際に試して経験を積んで
理解していくのがいちばんです。


ここでは硬度の違いをどのように使い分けるかについて一般的なところを書いておきます。

鉛筆の先を見ると、柔らかい芯ほど太いのがわかりますが、従ってタッチ一本一本の太さは、
軟らかい鉛筆ほど増します。
4B、6Bなど「B」の数が大きくなる程、芯は軟らかく、軽い筆圧でもしっかりとした黒さが出ます。

例えば、2Hと2Bを使い、同じ程度の筆圧で同じくらいの本数の線を並べた面を作ってみると、
硬い2Hで作った面の調子は淡く、やわらかい2Bによる面の色の方が濃くなります。
また、たとえば2Hと2Bとで、それぞれ同じ程度の濃さのグレーを作ろうとすれば、
2Bでは軽く少ない線で、2Hではかなり多くの線を重ねなければ、同じ位の調子を出すことは難しいでしょう。

これを、単純に応用すると、明るい面をしっかりと描きたい場合には、
線の密度を高めてもあまり暗くならない硬めの鉛筆を使用すれば、描写しやすいことになり、
暗い・或いは色の濃い面を描き込む場合は、軟らかい鉛筆を使用すれば、
濃度の高い深い調子が出やすい事になります。

しかし、確かに、軟らかい鉛筆の調子は、深い強い暗さが出ますが、4B・5B・6B等で
線を多く重ねていくと、粉が浮いたようになり、それ以上の調子が乗りにくくなることがあります。
このような場合は、一旦、HB等の少し硬めの鉛筆のタッチをその上にかけて
粉を抑えるように落ち着かせると、更に深く濃度が出ます。
必ずしも軟らかい鉛筆だけで濃い色を出せるという訳ではありません。

そして、鉛筆の硬度の違いは、単純に濃淡の表現だけではありません。
# by hiratsukadessan | 2010-10-27 03:18 | デッサン技法
調子は線の集まりでできていますから、たとえ輪郭線が描いてあっても、それも調子を構成する要素
となってしまえば、一本の線として浮き上がって見えることはありません。
だからどうしても輪郭をシャープにくっきり出したかったら、
敢えて【輪郭線】を描き、その線が一本の輪郭線として浮き上がって見えなくなるまで、内側の調子を
描き込んで行くという方法も考えられます。

しかし普通は、密度のある線によって面が描き込まれていけば、別の部分との【境界】は、
そこにわざわざ輪郭線を入れなくても、既にしっかりと表われているはずです。
それにもかかわらず、輪郭線を入れないとかたちが見えないとしたら、
その部分の【調子】が正確に描かれていない事が一番に考えられます。


輪郭線があるのはどんなところかというと、
ものともの(またはかたちの部分と部分)の重なり合うところ、かたちが大きく変化するところ、
バック(バックを白で描いている場合は余白)とモチーフとの境界、…の、どれかではないかと思います。

ものとものとの重なりあう部分またはかたちの変化する部分に、その境界として、輪郭線が入っている場合は、
単純に、境界を隔てて、どの部分はどちら側が、より暗いのか、明るいのか、色彩の濃淡を含めて、
違いが必ずあるはずですから、それをていねいに観察し、見えている通りの関係になるよう、
画面の調子を正しく整え、輪郭線を調子に溶けこませます。

それから、その部分を基準にして全体の調子の関係を見直します。
この観察は、画面全体の調子の流れをつかむための重要な作業になります。


次に、バックとの境界の輪郭線の場合、前稿に書いた回り込みの観察不足だけではなく、
バックを描かない事が多い鉛筆デッサンでは、実際にはバックに暗い色があって、
手前のモチーフの面が明るい、淡い調子であると、余白とモチーフとの境界をどう表現したらいいか
わからなくなる事も多いかもしれません。

このためということではありませんが、鉛筆デッサンでは、原則として、どんなに明るい面でも、
鉛筆のタッチをまったく入れない画用紙の白のままで残すことはせず、
すべて調子を入れて全体の関係を描き込むようにします。

画用紙の白が残るのは、金属などのごく一部に入る光の反射などの非常に明るい部分に限り、
それ以外の面については、より暗い面を作ることで、明るさを感じさせると考えて
調子の幅を作っていきます。

ですから、余白部分と隣り合う明るい面についても、鉛筆の硬度の選び方やタッチの工夫などで、
明るさを保ちながら、線の密度を作るようにします。
これでほとんどの場合は、明るい部分も輪郭線を使う必要はなくなるはずです。

また、練りゴムによって、余分な汚れや線を取り去ることで、
くっきりとしたシルエットが出てくるかもしれません。

どうしても弱い場合、線として浮かび上がって見えないように正しい調子を取ることを注意しながら、
かたちを取り囲む線を入れることもあるかもしれませんが、これは例外的な処理と考えておいた方が
良いと思います。


いずれにせよ、よく観察し、適切な調子を描写することに尽きると言えますが、
こうして、線の密度が出て来た段階で、輪郭部分をチェックしていくことにより、
回り込む面の観察や、調子の表現の幅を拡げる観察の手がかりを得てください。
# by hiratsukadessan | 2010-10-22 01:50 | デッサン技法
描き込みが進み、線の密度が出て来れば、輪郭線は調子に埋もれて見えなくなって来るはずです。
この段階で、自分の画面を客観的に眺めてみて、
もし(無意識のうちに)輪郭線を強めていたり、まだ輪郭線が残っている箇所が
みつかったら、その線部分は、実際にはどうなっているのか、モチーフを改めて観察してください。

輪郭線が入っているのは、かたちの【回り込み】という重要な部分であることが多く、
そこに線を描き入れているとしたら、重要な【回り込み】の観察ができていないことになります。


デッサンで立体を表現するには、見えない部分がどうなっているのかをも感じさせる表現を、
目指さなければなりません。
目の前にあるのが、立てた円盤なのか球体なのか、普通の日常生活で、横にまわって見なくても
わかってしまうものなら、デッサンでも描き分けられなくてはいけません。

どうすればそれが描けるのかは、
自分が、目の前のものを見て、何を感じ取っているのか、を、探し見つけ出すしかありません。
そのひとつの大切な手がかりは、回り込む面の観察と描写です。

ということは、当然、輪郭線に囲まれた【内側】部分だけの観察では不充分で、
かたちの回り込む面の部分、つまりまさに輪郭線上の、見えなくなっていくぎりぎりの部分まで、
しっかりと目をこらして観察する必要があります。

視界から見えなくなっていく面はどのように変化していくのかを描くべきなのです。
そこに輪郭線を置いているのは、この重要な観察をしていないことになります。

輪郭線のある場所をよく観察することこそ、立体の表現のための、とても重要なポイントです。
# by hiratsukadessan | 2010-10-22 01:41 | デッサン技法