透視図法とデッサン

デッサンについて、「パース」が狂っているとか、「パース」がキツイとか、
画面やもののかたちの奥行きの表現について「パース」という言葉を使うことがよくあります。

「パース」とはパースペクティブperspective・・のことで、
透視図法に基づいて描く透視図のことを「パース画」と呼びますが、
デッサンでは、透視図法的にかたちの描写を検証する際にこの言葉を使います。

透視図法には、一点透視法、二点透視法、三点透視法などがあり、
平行な直線が集約されていく「消失点」を設定して、図法に基づいて描くのが透視図です。
所謂「パース画」は、このような図法により、図面と数値に基づいて作成された「図面」です。


デッサンでは、数値は用いず、肉眼で観察することのみによって、
実際に自分の目で見えるとおりに描写しようとするものですが、
遠いものほど小さく見えるという遠近法の考え方は共通です。

ではデッサンも、あらかじめ透視図法によって画面全体の構図を決めて描き始めれば、
簡単に、正確なかたちや空間を描けるのではないかというと・・・

実際には、近距離の観察では画面に納まる範囲内に消失点を求められないケースが多いと思いますし、
図法的に正確な理論上の視点を定めることは簡単な問題ではありません。
そして複雑な曲面や不定形の面の変化により構成されるかたちでは、
消失点に繋がる平行線を見つけ出すのはとても難しいのではないでしょうか。

ですからデッサンの場合、先に遠近法ありきで図面のように画面を組み立てていくのは
困難でもあり、すべてのかたちを遠近法だけで捉えることは現実的ではありません。
またデッサンの目的は単に構造的に正確な図を描くことではありませんので、
結論としては、そのようなアプローチは適切とは言えないと思います。


けれども基本的には遠近の表現は透視図法に共通ですから、
特に角柱や直方体、円柱などのような基本形に還元できるかたちの見え方を確認する場合、
また複雑なかたちを、これを取り囲む基本形態に置き換えて画面上の配置や大きさを決める場合など、
透視図法を応用し、補助線を引いて描写の手助けにしたり、かたちの修正の目安にする場面は少なくありません。

(補助線については別に述べます。)

したがって、透視図法についての基本的な理解は、デッサンを進めるに当たって、意味のあることだと思います。
しかし、デッサンの経験を重ね、デッサン力のいくつかの要素、観察力、イメージ力、等を高めて行けば、
透視図法的な描写は、図法を引用せずとも直感的に行えるようになって行くはずです。

数値に基づいた正確な作図法は、イメージの表現や伝達のために重要な方法だと思いますが、
例えばそれ以前に自分のイメージを練り、具体化していく段階の作業や、
図面から、リアルなイメージを得ようとする際に、必要なのは、
実物をより詳しく観察し、空間を捉えようとし、そしてそれを描写、表現しようとする
デッサンの経験から身についてくる「デッサン力」と呼ばれる各種の感覚ではないかと思っています。


写実的な絵画の遠近法のひとつとして、幾何学の世界の透視図法が応用されるようになり、
奥行きのある絵画表現が生まれてから、長い時が流れ、現代の我々はそれを用いた絵画表現を
当然のように感じていますが、目の前のものを観察して描こうとする際に、
必ずしも透視図法的に見えているとは意識できない事も多いことを考えると、
画法として透視図法を用いる・・というのはすごく大きな発見であっただろうと想像できます。。
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by hiratsukadessan | 2010-10-19 00:34 | デッサンとは