デッサン上達法(1)

このようなタイトルをつけると、すぐにラクに、デッサンがうまくなる方法がある…
とでも言うのかと思われそうですが、そういう主旨ではありません。
しかし、効果的なトレーニングの方法はあると思っています。

それには、トレーニングの目的を良く理解することも大切です。


まず、鉛筆デッサンは、鉛筆の使い方のトレーニングではありません。
鉛筆で描くテクニックを覚えるためのトレーニングではありません。

このように描けばこのように見える、こういう場合はこう描けば良い…
そういうことをいくらたくさん覚えても、それだけでは良いデッサンは描けないし、
デッサン力が身についたことにはなりません。
長い年月、数多くのデッサンを描き続けていれば、自然に鉛筆の使い方はうまくなり、
それなりのhow toも覚えられるだろうと思いますが、それがデッサンの目的ではありません。

もし鉛筆の技術を上達させるのが目的であれば、デッサンの応用範囲は限られたモノになってしまいます。
何故デッサンが、色々なアートの基本と言われるのかを考えれば、
必ずしも鉛筆のテクニックとは関係のないものであることがわかると思いますし、
こう描けばこう見えるということを覚えるだけなら、実際にモチーフを見ながら、
かたちを測ったり観察したりする以外に、もっと効果的な方法がありそうです。


それではデッサンは何を目的としているのか…

(本来の、広い意味でのデッサンとは、作家が自分の作品のための資料として、
また、エスキースやアイデアスケッチ的な意味で描くもの等も含まれると思いますが、
ここでは狭い意味のデッサン、つまり色々なジャンルの表現や造形などのための
基礎トレーニングとして行なわれるデッサンについて書いています…)


デッサンで磨かれるのは、観察力(物の見方)そしてイメージを具体化する力、
そのような、表現の基礎となる、自分の内側で行なわれる作業を強化する力…であると思います。
表現のテクニックは、その後から付いてくるのです。


デッサンでは結果として出来上がる作品よりも、そのプロセスに重要性があります。
デッサンを制作していく内に、それまで見過ごしていたものが見えるようになること、
見えなかったものが見えるようになること…これがデッサンの目的と言えます。


そのためには、見えるものを見えたとおりに紙の上に表わそうとして
自分がどんなものを描いているのか、それが本当に見えるとおりなのか、
見る(モチーフ及び自分の画面を…)というインプットと
描くというアウトプットのサークルを回す事が大切です。

このサークルを回す内に、それまで自分は、ものを見ているつもりで
実はそのものの存在を認識した時点で頭の中にある観念と無意識にすり替えていた事に気づかされます。

そして実際に視覚が捉えている映像には、認識のフィルターにより、削除されていた情報が
数多くあったことがわかってきます。

このフィルターは、各個人により微妙に違うものであるかもしれません。
ですからフィルターを外したものを表現しなければ、他人には正しく伝わらない可能性も
あるのではないかと考えられます。

これに気づかないまま、自分と同じフィルターを持つ人にしか伝わらない表現しかできないか、
それらのフィルターを外した状態を知った上で、敢えて意識的にフィルターをかけた表現をするのか、
この違いは大きいのではないでしょうか。


このことをしっかりと意識して、デッサンでは、とにかくモチーフをよく見る、
見えるものを見えるとおりに描く事に徹する、そしてモチーフと自分の画面とを見比べる、
違うところを探し出して直す、更に観察する、見えるものをもっと探す、描く、見比べる、
直す、描く…この繰り返しです。

どう描けばどう見えるかなど考える必要はありません。

目の前のモチーフが、どうなっているのかを観察し、そのとおりに描けば良いだけです。
モチーフと同じように見えないのは、何かが違っているからです。
どこが違うのかを、一つでも二つでも、見つけ出しそれを描くだけです。

このようなデッサンをしていれば、どういうところを観察すると、重要な調子がみつかりやすいかとか、
かたちを捉えるポイントはどこかとか、自分はどういうところを見落としやすいのか等々、
観察のポイントというべきものがわかってきます。
これが、【上達】への道です。


汚れなくきれいに整って仕上がった作品が必ずしも良いデッサンではありません。
始めの計画通り順調に、どこも直すことなく仕上がることが理想的とは言えません。
むしろ、始めには見えなかった変化を発見し、形の狂いに気がつき、それらを直し、
描き込んで行けば、予想外の線や調子が入って【きれい】とは言えない仕上がりになってしまったとしても、
その画面からは、存在感や迫力などが伝わり、自然な空間が感じられる作品となっているかもしれません。
それがデッサンでは重要なのです。
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by hiratsukadessan | 2010-10-30 04:33 | デッサンとは